「「狂犬病ワクチンって打たないといけないの?」」
診療をしていると、よく聞かれる質問です。
皆様、とくにワンちゃんと暮らしている方は名前をご存知と思いますが、今回は「狂犬病ワクチン」について書きたいと思います。
「狂犬病」ってどんな病気?
狂犬病は「狂犬病ウイルス」による感染症であり、名前に「犬」と入っていますが、人を含めたすべて哺乳類が感染する可能性があり、犬でも人でも発症してしまうと、死亡率はほぼ100%という恐ろしい病気です。
現在でも、日本、イギリス、オーストラリアなどのわずか10か国を除く、世界中すべての国で発生がみられ
ていて、年間でおよそ55,000人もの方が亡くなっています。
日本でも、数十年前までは狂犬病の発生があり死者も出ていましたが、狂犬病予防法の制定により、登録とワクチン接種の義務化、野犬の捕獲が行われ、1956年を最後に国内での発生はみられていません。しかし、海外で犬に咬まれた方が帰国後に発症するケースはいまだにありますので、海外ではむやみに動物と接触することは避けるべきです。
狂犬病については、厚生労働省のHPにも詳しく記載されていますので、ぜひご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/
狂犬病ワクチンの接種は飼主の「義務」
日本にいるワンちゃんは、市町村への登録と年1回の狂犬病ワクチンの接種が義務付けられています。現在、日本では狂犬病の発生がないので、ワクチンを打たなくても、すぐに狂犬病ウイルスに感染する可能性は限りなくゼロに近いです。
では、なぜワクチンを接種しなくてはならないのでしょうか?
その答えは、「法律で義務付けられているから」です。
19歳と11か月の未成年が飲酒してはダメなのと同じです。
狂犬病予防法にはしっかりと罰則が定められており、違反した場合には飼育者に20万円以下の罰金刑が科され前科としても残ってしまいます。悪質でない場合には、不起訴処分となることもあるようですが、実際に処罰されるケースも散見されますので、法律に則って(のっとって)ワクチン接種を受けていただくのがお勧めです。
ただし、ワンちゃんの体調によってはすぐにワクチン接種が出来ない場合もあるので、そのような場合にも獣医さんと相談しながらワクチン接種のタイミングを検討する必要があります。
高齢であろうと、病気であろうと、法律上は打たなくも良い理由は一切ないのです。
狂犬病の発生がないのにワクチン接種しないといけないなんて・・・
実は、狂犬病が国内に侵入する可能性は非常に低いと考えられています(報告では46,280年に1度の確率)。また、ワクチン接種のみでは狂犬病侵入時の感染拡大を防ぐことは難しいと考えられており、狂犬病ワクチンの接種に関しては様々な議論があります。今後、法改正等により狂犬病ワクチンの接種が変わる可能性もあります。ワクチン接種が任意になる時代が来るかも知れません。
ただし、狂犬病はいまだに世界中でたくさんの死者を出していますし、発症してしまうと致死率がほぼ100%の恐ろしい感染症です。
狂犬病侵入リスクは低いとしても、私たちは東日本大震災などで「想定外」が起こることを経験していますので、安易に「たぶん大丈夫でしょう」とは考えるべきでないと考えています。狂犬病が侵入した場合には、かなりのパニックが想定されますし、ワクチンも不足するでしょう。慌ててワクチン接種をしようとしても出来ない可能性は十分にあります。
“法律で義務付けられている”のは、国民の皆さんやワンちゃんたちを守るためであり、
決してただの押し付けではないということを覚えておいていただきたいと思います。
万が一の時に、愛犬とご家族の命を守ることが出来るのは、やはり定期的なワクチン接種です。ワクチン接種の負担が心配な場合には、かかりつけの獣医さんと相談しながら接種のタイミングを検討してあげてください。
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寄稿:本庄犬猫病院 院長/山本 慎也 先生 <獣医師・獣医医学博士>
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